第447回  < 半導体不足による自動車生産台数の減少は本当か >

2022年から23年にかけて、新車の供給不足により、中古車価格が高騰したという記事を読むことが多かった記憶があります。新車を購入しても納入までに何か月もかかった理由として、半導体不足があげられていました。実際、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱と続けて起きた様々な地政学的な問題による部品供給の停滞は半導体装置の製造に悪影響を与えました。加えて、AI、EV、5G、自動運転などの技術革新により半導体需要が急速に高まる一方、新工場の立上げに時間がかかり、供給能力が追いつかない状況が続いたことで、当時は需給が相当ひっ迫していました。

しかし、2025年現在、半導体供給については、生産力の増強も進み、全世界的に改善が見られます。にもかかわらず、最近、自動車の供給が限定され、中古車価格が新車価格と比較して高値が続くとの報道があったので、事実確認をしてみようと思います。

まず、半導体不足による自動車生産台数の抑制についてです。半導体不足が最も深刻化したのは2022年で、特に、車に必要な車載半導体の需給が大幅に悪化しました。これは、従来型のガソリンエンジン車に比べて、EVにおける半導体搭載数が3-5倍であること、新車に標準装備されるようになった運転支援システムや自動運転に必要な画像認識、センサー、AIチップなどの需要も大きく伸びたにもかかわらず、前述の理由で半導体供給が抑制されてしまったからです。

半導体不足の問題に対して、グローバル企業、各国政府は早急に手当てをしました。日本政府も迅速かつ大規模な支援を展開し、半導体関連企業に対する出資や、台湾のTSMCの生産拠点の誘致を通じて対応しています。これらの結果、パワー半導体やアナログ半導体などの自動車に必要な半導体供給も改善し、国内自動車生産台数も徐々に改善しています。AIやスマホ、データセンター向けの需要が予測しやすい領域での半導体製造と比較すると車載半導体の製造の増産はやや遅れ気味ではあるようですが、それでも、新車販売の大きな足枷とはならなくなってきたようです。

大手自動車部品メーカーが半導体製造会社とパートナー連携する動きも見られ、EV化の進む自動車業界において半導体を原因とする生産抑制を回避する動きが見られます。しかし、現在、半導体市場における車載半導体の市場割合は約10%ですが、今後5年で市場規模が倍増すると予測されており、自動車が半導体市場に左右される傾向は今後ますます大きくなることも想定されます。このような市場変化に対して、今後も注目していきたいと思います。

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