第448回< 2025年自民党総裁選結果の金融市場への影響について >

2025年10月4日(土曜日)に投開票が行われた自民党総裁選において、高市早苗さんが小泉進次郎さんとの決選投票を制して新総裁に選ばれました。女性初の新首相となることはほぼ確実となり、歴史的な総裁選結果となりました。麻生太郎さんの影響力など、政治的な思惑なども話題になりましたが、今回は、高市政権の誕生が金融市場にどのような影響を与えるかについて考えてみたいと思います。
総裁選を終えた10月6日(月曜日)の週初めには、日経平均株価は48,000円を超えるなど、大幅に上昇しました。また、為替も大幅な円安ドル高となり、1ドル150円を超えて推移しています。これは、高市早苗さんの基本的なスタンスが、積極的な財政緩和による公共投資や経済対策を重視していること、また、デフレ脱却・インフレ目標達成、日銀との協調を前提に金融緩和路線にあると思われていることが背景です。基本的に、金融市場は、第二次安倍晋三政権下における経済政策を踏襲するものと見込んでいることが伺えます。
トランプ大統領は、個人的にも安倍晋三元首相との親交が厚かったことで知られますが、安倍政権と政策的に近い高市政権の誕生には好意的と考えられます。このような状況を踏まえると、当面、日本の金融市場は株高、円安が継続するものと考えられます。また、低位で安定している金利水準も大幅な上昇が見込まれなくなることから、不動産価格なども引き続き上昇傾向を維持するものと思われます。
2012年末に発足した当時の安倍政権時、日本は長引くデフレ環境から脱却できずに、日経平均株価も10,000円台を割れるなど、2008年の金融危機以降の低迷下にありました。その後、黒田日銀総裁の協調による積極的金融緩和政策を継続や、金融庁が主導したNISAの導入などによって、株式をはじめとして金融資産価格の上昇が続きました。消費者物価指数も2021年以降、デフレを脱却したと言える水準に達しています。アベノミクスと言われた景気刺激的な総花的な金融緩和政策は一定の成果を上げたと評価されているため、その経済政策を踏襲する高市政権を金融市場が歓迎しているのが現状と思われます。
では、高市政権下での金融市場は今後も積極的な財政政策、金融緩和寄りの政策を好感して、金融資産、不動産価格の上昇を維持する状況をつづけるのでしょうか。その答えはこれまでのアメリカにおける金融市場の推移にあるのではないかと思います。第一次トランプ政権下、米中貿易摩擦を含め地政学的なリスクが増大する中でも米国金融市場は堅調に推移しました。これは、トランプ大統領就任時、財政政策と経済成長期待、物価高対策として上昇基調にあった政策金利を、景気減速懸念などを理由に、トランプ政権が半ば強引に引き下げ方向に誘導した結果もありました。第二次トランプ政権下にある現在、地政学的には不安定さが高まり、トランプ関税による景気に対するマイナス影響が見られる中、金融緩和期待から株価は高止まりしている状況です。但し、いったん上昇した金利の影響から、不動産価格の調整と一部のバイアウトファンドのパフォーマンス低下が見られています。このような状況に対応して、トランプ政権は低下余地のある政策金利の下げを誘導し、更なる景気刺激を検討しているように見えます。
高市政権下の日本の金融市場は、第1次、第2次トランプ政権下での米国金融市場の推移を参考にすることである程度予測可能だと考えています。しかし、今後、インフレ下での財政拡張は、実質金利がマイナスの日本において金利上昇圧力につながりやすく、金融市場の不安定な側面を助長する可能性も高そうです。


