第450回 < 香港でのプライベートエクイティ国際会議に参加して >

日本ベンチャーキャピタル協会の目的の一つは、海外から日本のVCならびにスタートアップへの投資促進です。その活動の一つとして、海外のファイナンシャルセンターで、日本のベンチャーエコシステムの現状、発展を理解していただくための発表、対話を継続的に行っています。ちなみに、過去、シンガポール、ロンドン、ニューヨークで実施しています。今回(2025年11月)は、香港で例年開催されているプライベートエクイティ関連の国際会議に参加し、日本のVC、スタートアップを取り巻く環境についてプレゼンテーションを行うとともに、大手機関投資家との面談を実施しました。
日本のPE投資を取り巻く環境は、この10年で大きく進展し、特に日本のバイアウトファンドはそのパフォーマンスが欧米のバイアウトファンドに比べても良好であったことから、海外投資家からの資金流入が継続しています。その結果、ファンドサイズも大規模化し、大小の日本企業の買収を通じ、大企業からのカーブアウトによる企業価値向上や、事業承継問題の解決がなされています。このことは、日本経済の成長にとってはプラスの側面が多く、歓迎すべき傾向だと思っています。一方、日本のVC、スタートアップに対する資金流入は、バイアウトのそれに比べるとまだ少額です。足下でのグローバル市場におけるスタートアップ企業の時価総額調整の影響もあり、米国ではVCに対する資金流入が若干停滞している感があります。
今回の国際会議でも、日本のバイアウトファンドは注目を集めていました。長引く低金利下で事業性融資として多くの金融機関が融資資金を提供することは周知であり、日本はレバレッジを利かせるバイアウトにとって良好な環境です。また、高齢化が進む企業経営者が多いことは事業承継を契機とした企業買収につながります。更に、日立などの大企業の子会社、事業部門の整理はカーブアウト案件を後押ししてきました。加えて、中国への投資を制限された米欧投資家、バイアウトファンドの存在が日本での企業買収案件への投資を後押ししており、当面この状況は継続するとの見方が大勢です。
一方、日本のスタートアップ、VCを取り巻く環境の変化について理解している海外投資家は限定的です。米国VC、スタートアップへの資金流入が減少している中、海外の大手投資家による日本のAI関連会社や自動運転、人事システムの会社への出資が見られるようになりました。とはいえ、日本のVC、スタートアップ投資は過熱感からは程遠い状況にあります。多少逆張り的な発想もありますが、個人的には日本のスタートアップ、VC関連に投資をする好機が近づいているように思います。元来、市場のサイクルに関わらず、足下の状況をよく調査し、今後5-10年で大きく成長する分野の市場シェアを大きく取れる会社を見極めた投資は高いリターンが期待できます。加えて、今は数年前に比べると、投資に対する焦燥感がなく、優良な投資機会に対して適正なバリュエーションで落ち着いて投資をできるタイミングのように思えます。今回の香港出張を通じて、グローバル投資家による投資のトレンドをあらためて感じ、知ることができました。同時に、私どもが注力すべき投資対象についても考える良い機会になったと思います。


