第437回  < 世界のベンチャーキャピタル事情 >

年に一度、世界のベンチャーキャピタル(VC)、プライベートエクイティ(PE)協会の代表者が一堂に会して連日ミーティングをする機会があります。今回の開催地は初めての日本となりました。北米、南米、欧州、アジアの各国からの参加者が集まり、各地におけるVCやPEの状況について話し合いを行いました。北米のシリコンバレーがけん引してきたベンチャー投資ですが、欧州、アジアのベンチャー投資も非常に活発です。インドからの参加者に聞くと、インドには110社以上のユニコーン企業が存在しており、中国を敬遠する投資家の受け皿になっているとの話を聞きました。

一方、その中国でも、グローバル資金の流入は明らかに細っているものの、ベンチャー起業自体は活発で、未上場株式のセカンダリー取引は活況であるとの話もありました。また、イスラエルは大変な状況にあるにもかかわらず、起業やVCによる新規投資や、上場、売却などの活動は継続しているとの話でした。香港を拠点とするVCやPEに過去20年投資を行っている投資家によれば、やはりアジアにおける投資の中心はインド、中国であり、PEについては日本、韓国への投資も行っているものの、これまで、日本のVCについてはあまり存在を意識してこなかったと話していました。

各国からの参加者が一様に驚いていたのは、日本におけるベンチャー業界の盛り上がり方です。今回のミーティングを通じて、日本政府のサポートや大手機関投資家の国内VCへの投資が始まっていること、資金調達を行っている日本のスタートアップ企業の数やその質について、参加者に良い意味で新鮮な驚きを持ってもらったように思います。一方、アメリカやアジアでは、足下の低バリュエーションを嫌気して、上場の延期等が相次いだ結果、VCやPEによる資金回収は遅れがちになっているようです。また、米国における金利上昇を背景に株式から債券に資金が動いており、プライベートアセット市場でもプライベートクレジットへの資金流入が進んでいます。2022年までのグロース市場バブルは一旦落ち着いたと見られます。

先日のファイナンシャルタイムズ(FT)は、「日本の株式市場はあまりにも多くの“punycorns”を創り出している」という記事を掲載しました。これは、時期尚早な上場を行ったスタートアップ企業に対して、市場が成長ストーリーを信じなくなってしまったことで時価総額が数百億円を超える見込みがなくなってしまう状況に警鐘を鳴らす内容になっています。今回のような各国のVC、PE関係者との交流を継続することで、世界の状況を学びつつ、日本の市場が発展する道を模索していきたいと考えています。

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